沖縄県名護市
沖縄の「WOTA BOX」が能登半島地震支援でも活躍
『突然の災害時、水循環型シャワーで助け合える仕組みづくりを』

2023年8月に沖縄県や九州地方に接近した台風6号は、多数の死傷者に加えて最大20万世帯以上で停電、最大3万戸以上で断水(内閣府調べ)という大きな被害をもたらしました。WOTAは沖縄県名護市において、株式会社偕生メディカルサービスと共同で水循環型シャワー「WOTA BOX」を用いて被災者の方々に入浴を提供しました。
名護市は台風6号をきっかけに「WOTA BOX」を導入し、その直後には能登半島地震の被災地支援のため同システムを貸与くださいました。今回は名護市総務課の阿波根昌道さんと比嘉将太さんに、水循環型シャワー「WOTA BOX」導入に至った背景や能登半島支援における貸与、そして機器返納後の平時における活用についてお話を伺いました。
災害はいつどこで起こるか分かりません。だからこそ、可搬型システムを活用して自治体間で助け合える仕組みが必要だと阿波根さんと比嘉さんは語ります。市民イベントでの活用の実例も含め、「WOTA BOX」の導入効果についてインタビューをもとにご紹介します。
想定以上の台風被害で浮き彫りになった「水」の重要性
―2023年8月の台風6号において、名護市ではどのような被害がありましたか。
沖縄は比較的「台風慣れ」している地域だと思うのですが、台風6号は規模が大きく、かつ一度離れた後にUターンして戻ってくるような進路を取ったこともあり、停電が1週間程度続くなど影響が長期間にわたりました。また高潮や土砂災害で道が塞がってしまったため、自力では避難所に行くことができない方も多くいらっしゃいました。

―特に生活用水に関しては、どのような問題が起こっていたのでしょうか。
マンションが立ち並び人口が集中している市の中心部が停電してしまったため、多くの方が水が使えない状況に陥ってしまいました。生活用水を求める市民の方々の声は大きく、名護市の環境水道部が給水袋で水を配って対応しました。
被災された方々の衛生対策として、名護市役所の支所のうち停電などの被害が小さかった施設では、入浴設備を開放するという対応も取りました。市役所近くの市民会館では2台の「WOTA BOX」によるシャワー入浴の提供もありましたが、市内東部でも同様の支援が展開できていれば、より多くの方が衛生を確保できたのではないかと思います。
「水循環型」と「可搬型」が導入の決め手に
―避難所での衛生対策について、従来はどのような備えを講じられていましたか。
感染症対策としてパーティション(間仕切り)やマスク、消毒用アルコールなどは揃っており、段ボール製の非常用トイレも備蓄していますが、体を拭くボディシートのような入浴の代替手段については準備がありませんでした。飲料水や非常食の方が優先順位が高く、身体の衛生に特化した対策には手が回っていなかったと思います。
しかし台風6号の後に「WOTA BOX」を5台購入したことで、手薄であった部分を埋めるかたちで、全体的な災害対応を強化できました。
―「WOTA BOX」の利点や、台風6号の後に導入いただくに至った決め手はどのような点だとお考えでしょうか。
安心・安全な生活環境の整備や災害時の機能強化を目的に「WOTA BOX」を導入いたしました。
近年、災害発生時の大きなキーワードになっているのは、避難所等での二次災害、特に病気や心身のストレスによる災害関連死の問題です。被災者の方々の衛生を守るためには、少ない水で多くの方に入浴機会を提供できる水循環型シャワーの存在は本当に重要だと考えています。
また、可搬型であるのも非常に良い点ですね。現在は5台を市内の東部と西部に分けて保管していますが、先日、市民イベントで利用した際には車に乗せて一度に運べて、現場でも短時間で設営できています。

いつどこで起こるか分からない災害に「互助」の備えを
―能登半島地震の発生時には、納品後間もない「WOTA BOX」全5台を被災地支援のため貸与くださいましたが、こうした支援を振り返ってどう評価されますか。
2024年1月1日に能登半島地震が発生した直後から名護市長が被災地支援に乗り出し、「WOTA BOX」の貸与もすぐに決まりました。
能登半島地震をきっかけに、やはり断水の長期化は、大きな懸念点だと再認識しました。とくに生活用水は飲用水の何百倍もの大量の水や、水利用するための設備, 排水処理が可能な設備が備わっていなければ使えないため、飲用水や食料などと異なる対応が必要になります。断水の復旧に1ヶ月、2ヶ月以上を要するとなると、災害関連死を防ぐためには生活用水の確保など衛生の問題を解消する取り組みが非常に重要だと考えております。
―自治体の災害対策においては今後、どのような取り組みが必要だとお考えでしょうか。
災害は、いつどこで起こるか分からないものです。だからこそ、「WOTA BOX」の活用も含め、自治体間で相互に災害支援ができる関係性やネットワークの構築は本当に必要なものだと思います。
いざというときに迅速・柔軟に「WOTA BOX」の貸与が行えるようなマニュアルの整備や、「WOTA BOX」を保有する自治体間の関係構築等が進んでいくことを期待しています。
市民イベントや防災訓練を通じて、運用ノウハウを広げる
―2024年9月には貸与いただいた「WOTA BOX」の返納に合わせて運用実演会も実施させていただきましたが、市民の皆様の反応はいかがでしたか。
今回の実演会には市長や市役所・関係機関の職員だけでなく、市内の自主防災組織の方々や大学生など、多くの方に参加していただきました。水循環型シャワーについては「すごい製品だ」「こういった備品があると安心できる」といった声を頂き、実演を通して機器の使い方などの知識も深まったと感じます。こうした機会が、名護市の災害対応能力向上に繋がっていくと考えています。

―平時においては「WOTA BOX」をどう活用されていくご予定でしょうか。
運用実演会の翌週、「久志20kmロードレース大会」というランニング大会の会場に水循環型シャワーを設置したところ、予想以上に多くの参加者に使っていただけました。実際の利用者からは「気持ちよかった」「災害時だけでなくイベントでも使えるのはとてもいい」といった感想も頂いています。
今後も、定期的な防災訓練で避難所開設の項目に組み込むなど、多くの職員や市民の方々が「WOTA BOX」に触れられる機会を検討していきます。経験すれば決して難しいものではないので、様々な取り組みで設置・運用可能な人を増やしていきたいと考えています。

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