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NTT西日本

循環型シャワーがインフラ復旧活動の原動力に

「被災地に駆けつける支援者こそ、断水への備えを」

NTT西日本

2024年1月1日に発生した能登半島地震により、多大な人的被害、住家被害、インフラ被害が発生しました。ピーク時の避難者数は3万人以上にも及び、現在もなお避難所生活を送る方々がいます。
そうした状況下で、多くの支援者による復旧・復興作業が行われてきました。今回は、石川県輪島市で通信インフラの復旧作業に従事する方々をサポートする役割を担う、NTT西日本 北陸支店で復旧班の前線拠点整備に現場責任者として携わった廣田靖郎さんにお話を伺いました。
被災された方々の生活再建のために、復旧作業員の皆様はNTTビル内の事務スペースに作った仮設宿泊拠点に泊まり込み働く必要があり、かつ作業で服や体が汚れるなか、断水により入浴が出来ないことは「社員にとっては心身ともにつらい環境だった」と話します。
今回は、インフラ復旧現場での「入浴できないつらさ」と、その解決策となる「WOTA BOX」がもたらした変化について、廣田さんへのインタビューをもとにご紹介します。

ライフライン復旧に欠かせない、作業員の心身のサポート

―能登半島地震において、発災直後から社内ではどのような動きがありましたか。
 発災後、すぐに災害対策本部が立ち上がり、対応を開始しました。NTT西日本では、災害発生時に大勢の通信復旧作業員が現地入りするのに伴い、彼らをサポートするための「総務厚生班」が組まれます。私もそのメンバーとして、作業員よりも先に被災地に駆けつけ、拠点の立ち上げと環境整備を行いました。現地には大勢の作業員が泊まれるホテルはなかったので、衣食住に関わるありとあらゆる物資を自分たちで調達する必要があったのです。
 通信という重要なライフラインを一刻も早く、広範囲にわたって復旧しきるためには、作業員への身体的・精神的サポートは絶対に欠かすことができません。

水が足りない過酷な労働環境で、循環型シャワーが原動力に

―複数拠点で復旧支援をするなかで、現地ではどのような苦労がございますか。
 何よりも困ったのは、やはり断水のため充分な量の水が得られないことでした。給水車や仮設トイレのバキューム車は市町(自治体)が優先して確保しており、避難者の方々のニーズに対応するので手一杯の状況です。
 我々のような民間企業は給水車を使うことができないので、トラックを借りて金沢市から水を運ぶ「簡易給水車」のような方式で生活用水を確保していました。

―水が限られている中、どのように身体の衛生を保たれていたのでしょうか。
 しばらくの間は、タオルやボディシートで汗や汚れを拭ったり、ドライシャンプーで頭を洗ったりして、どうにかしのいでいました。ペットボトルの飲料水で水浴びをするという方法もあったかもしれませんが、何しろ真冬だったので限界があります。お風呂に入れないのを我慢して働き続けなければならず、対策が必要でした。
 だからこそ、限られた水を浄化して繰り返し使える「WOTA BOX」と個室シャワーが各拠点に届き、およそ2週間ぶりに入浴できたときには、作業員はものすごく感動していました。温かいお湯でしっかりとシャワーを浴びられるようになったことは、真冬の復旧作業に従事するメンバーの原動力となりました。

企業間の連携により、可搬型シャワーを素早く展開

―今回、NTT西日本様はNTT東日本様から「WOTA BOX」を借り受け、被災地の拠点で活用されていますが、現場利用に至るまでの経緯を教えてください。
 NTTグループ内での連携体制は以前からあったので、地震発生直後にはNTT東日本から支援の申し出が届いていました。その品目の中に「WOTA BOX」も含まれていたのです。可搬型の水循環システムで断水時でもシャワー入浴ができるとのことで、災害対策本部で「これはいい支援になるから借りよう!」という話になり、被災地の5拠点(美湾荘・穴水ビル・能都ビル・能登高校(体育館)・輪島ビル)に計10台を設置しました。
 「WOTA BOX」は持ち運び可能で運搬にも手間がかからなかったので、各拠点への設置はとてもスムーズでした。また、操作やメンテナンス自体はシンプルで、フィルター交換や水の補充など誰でも運用できるので助かりました。
 最初は使い方に慣れておらず色々と戸惑うことはありましたが、装置への水の補充作業をポンプで自動化したり、監視カメラで装置の稼働状況をチェックしたりと、「自律運用」の仕組みを自分たちなりに改善してきました。

衛生環境の改善により、働き方もより効率的に

―「WOTA BOX」は、インフラ復旧の現場にどのような影響を与えたのでしょうか。
 入浴が作業員のモチベーションを高めたのに加えて、働き方自体も変わりましたね。
 発災直後は、断水中の過酷な現場で復旧作業員の心身の健康を保つため、短いスパンでの宿泊の交代制を敷いていました。しかし「WOTA BOX」を導入して衛生環境が整ったことで、より長いスパン且つ効率的な宿泊交代制にサイクルを変えることができたのです。
 甚大な被害を受けた通信インフラの復旧作業が長期化する中で、作業員のサポートはもちろん、被災地支援を効率化し復旧作業を早めることができました。
災害現場の混沌とした状況で、通信の確保に時間がかかってはならないからこそ、こうした変化は、ライフラインを支える私たちのような企業にとっては大きなメリットとなりました。

すぐに現地に運べるからこそ、水循環システムは強い味方になる

―最後に、「災害時の水問題」を実際に体感された立場として、今後どのような災害対策が必要になると考えますか。
 今回の能登半島地震で実感したのは、「発災後の初動」が非常に重要だということです。西日本エリアでは南海トラフ巨大地震の発生も危惧されているので、そうした災害対応のノウハウに、非常に有用なツールである水循環システムの運用という要素も盛り込むべきだと思っているのです。能登半島地震においては、NTT西日本各エリアからメンバーを集め、災害対応の勉強会を開いてきました。こうした勉強会は今後も増やしていきたいと思っています。
 インフラ業界の他社からも、「復旧の現場で入浴ができない状況にすごく困っている」という声を数多く聞きました。「WOTA BOX」のような水循環システムの備えがあるかないかで、断水中の現場の状況は全く違ってきます。
いち早く被災地に駆けつける我々のようなインフラ会社や支援団体にこそ、水循環システムというソリューションは強い味方になると感じています。

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