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ジャンル: BCP ジェンダーフリー 防災

大阪府 泉大津市

WOTA BOXで、災害対策にジェンダーフリーやプライバシー確保の視点を

日常に防災がある街を目指す、大阪府 泉大津市

大阪府 泉大津市

大阪府の南部に位置し、和泉国の外港として、古くから人の往来が盛んであった泉大津市。地場産業である毛布やニットの製造のほか、大阪湾に面した会場で毎夏開催される音楽フェスなどのイベントが開催されることでも知られています。この泉大津市に、2021年12月に大塚商会から寄贈されたのがWOTA BOXです。実際にWOTA BOXを使用してみた印象、今後の活用法について、同市の危機管理監である政狩拓哉さんにお話を伺いました。

これまでの価値観を刷新し、“未来のあたりまえ” をつくりたい

―はじめに、泉大津市の特徴を教えていただけますか。

泉大津市の市域面積は約14平方キロメートルで、すべてが市街化区域になっています。人口約7万5,000人という小さな市ですが、港に面しているため昔から人の往来が盛んで、大阪府内で7番目に市制を敷いた歴史のある街です。現在市長は2期目になりますが、就任当時は大阪府内で一番若い市長でした。そのため、新しいことに対しても非常に前向きです。「未来のあたりまえを創る」をスローガンに掲げ、企業や市民のみなさんと一緒に、新たなまちづくりの姿を模索しています。

―行政として、どんなことに特に注力されていますか?

直近では、コロナ禍で見落としてきた多くの課題に気づきました。そこで政策の視点を1段階上げることに注力しています。例えば災害時の避難所ひとつをとっても、安全確保は注力するものの、衛生環境には配慮できていない。トイレやシャワーなどの設備や生理用品などの備蓄品もジェンダー視点が欠けていました。結果、過去の震災で発生した様々な問題が起きないよう対策を積み上げている最中です。
また、これまで以上にジェンダーの課題に対応するためにも、当市では政策推進部をはじめ全体の4割の部署において、女性が部長職に就き意思決定の場に参画しています。

―政狩さまが所属されている危機管理課は、どのような役割を担っている組織なのでしょうか。

危機事象や災害に対する統括を行うのが危機管理課の役割です。危機管理課の置き方は自治体によってまちまちですが、当市では、災害や危機事象が起こったとき市長が強力なリーダーシップを発揮できるよう、市長直轄組織として置かれています。現在は、コロナ対策の本部も危機管理課に置かれています。

―現在、多くの自治体がBCP対策※に取り組んでいますが、泉大津市では直近どのような対策を行っていますか。

2016年に最初のBCP計画を作成し、コロナ禍になってからは、各課に対して3回の見直しをお願いしました。本人が新型コロナウイルスに感染した、または濃厚接触者になって出勤できないときに、どのようにして市民サービスを続けていくかを特に考えてほしいと伝えました。
※BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)企業や自治体が自然災害やテロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、事業の継続や早期復旧を目的に予め取り決めておく計画のこと。

子どもたちも防災に興味を持てる“ワクワク感”がWOTA BOXの魅力

―泉大津市は2021年12月に、大塚商会様からWOTA BOXの寄贈を受けました。その経緯を教えてください。

当市では、2021年から官民が協力し、災害対策を強化しています。その一つに24時間稼働の民間工場の施設を、臨時避難所として提供してもらう災害協定があります。施設内に大浴場があり、災害時には避難者も活用させていただきます。但し、もともと男性専用でしたので、女性の避難者も使いやすいようドアを磨りガラスにするなどの改修をしてくださいました。こうした官民連携で社会課題を解決する、ジェンダー視点を反映していくなどの理念の方向性が一致しているということで、大塚商会様からWOTA BOXを寄贈していただく流れになったんです。当市では、既にWOSHを2台導入していましたが、WOTA BOXは導入に踏み切れていませんでしたので非常にありがたいご支援でした。

―WOSHは、市庁舎の1階に設置されているそうですね。WOSH、WOTA BOXを実際に使ってみて、どのような印象を受けましたか。

非常に魅力があると感じました。例えば、市が開く防災イベントはおもしろくないと思われがちで、避難訓練などを実施しても、参加者がなかなか集まりません。でも、WOTAの製品を展示すると、子どもたちが興味津々な目で見ていたり、楽しそうに手を洗ったりするんです。そのようなワクワク感を伴う点が、行政にはない魅力だと思っています。防災の本質的なところは伝えないといけませんが、そこに取り組むきっかけを生み出す力があるプロダクトだなと感じますね。
2021年4月に危機管理監に就いて以来、実感しているところですが、市民の日々の暮らしを支えるための予算も枯渇する中で、災害や危機事象が発生したときしか使わないものには多くの予算は付けにくい。そこで災害時にも平常時にも暮らしの課題を解決するWOTAのプロダクトはこれからより必要になると考えています。

―WOTA BOXは、災害時だけでなく平常時においてどんな活用ができそうでしょうか。

泉大津フェニックスで開催された音楽フェス「RUSH BALL 2019」の様子  写真提供:泉大津市

もちろん、平常時も活用していきたいですね。当市には「泉大津フェニックス」というイベント会場があり、毎年、そこで夏フェスが開催されます。フェス帰りの人たちからいつも聞かれるのが、「銭湯はありませんか?」ということ。皆さん、汗まみれのまま電車に乗りたくないからですね。もしも、夏フェスを開催する自治体がそれぞれWOTA BOXを所有して、必要なときは貸し合いましょう、といったことが叶えば、その場でシャワーを浴びて、“さっぱりして帰れるフェス” が実現できて、おもしろいのではないかと思っています。

ジェンダー平等、水資源の確保…時代に適した災害支援の在り方

―今後、市民の皆様にWOTA BOXを使っていただくにあたり、どのように役立ててほしいと考えていらっしゃいますか?

災害に強い街を実現するには、人づくりや街づくり、コトづくりが一番大事だと思っています。防災設備をただ所有するだけでなく、民間に貸し出したり、地域の中で触れてもらう機会を増やしたりすることで、市民の意識を変え、行動を変え、安心・安全なまちをつくってていきたいですね。

―WOTA BOXの導入を検討しているほかの自治体様に向けて、おすすめできる点があれば教えてください。

当市のような小さな自治体だと、災害時に給水車をたくさん確保するのは難しいですし、人手も不足してしまいます。また、応援の給水車が来るまでに日数がかかります。そのような非常事態に備えて、「持ち運べる給水車」ともいえるWOTA BOXを整備しておくことも選択肢のひとつではないかと思います。
また、人の意識を変えるといった点でも、WOTA BOXは役立つと思います。当市では、ちょうど60年前に地域防災計画を作成しました。時代は刻々と変化続けますが避難所の運営と市民がとるべき避難行動については、長い間見直してきませんでした。ジェンダーやプライバシーの確保といった視点も欠けていました。誰もが安心して避難できる環境は、贅沢とかわがままといった話ではなく、人命を守るために必要不可欠なもの。WOTA BOXを導入することによって、「なぜ災害時に個室シャワーが必要なのか」など考えるようになり、災害支援のあり方を見直すいい機会にもなるのではないでしょうか。

―最後に、WOTA BOXの導入によって市の危機管理はどう変わっていくかなど、期待や展望があれば教えてください。

WOTA BOXの導入は、貴重な水資源のあり方を、皆で考え直すという面でもインパクトの大きい出来事だったと考えています。
水をこれだけジャブジャブ使える日本は、世界的に見ても相当恵まれています。これが当たり前と思ってはいけないし、飲める水を気兼ねなく飲む以外の用途に使っていることに対して、もう少し地球規模の視点で考えることも必要ではないかと思います。WOTA BOXが1台あることで、災害時も多くの人が衛生環境を保つことできる。そういったWOTAのプロダクトの有用性を、未来の防災の担い手となる、若い世代に知ってもらえるような取り組みも今後はしていきたいですね。

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